私は2025年4月に実施された「情報処理安全確保支援士試験」に合格しました。実務経験はほとんどなく、完全に独学での挑戦でしたが、一度の受験で合格を果たすことができました。
本記事では、実務未経験の私がどのようにしてこの難関試験を乗り越えたのか、勉強法や使用教材、試験当日の戦略まで、できる限り詳細にご紹介したいと思います。これから受験を考えている方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。
勉強始める前に知っておきたいこと
勉強開始から本格対策までのスケジュール
私がこの試験の受験を意識し始めたのは前年の12月ごろです。そして、実際に本格的に勉強を始めたのは年が明けてからでした。
平日は仕事が忙しく、まとまった時間を取るのが難しかったため、毎日1時間程度が限界でした。一方で、休日には予定がない限り、一日中机に向かって学習に集中するようにしていました。限られた時間の中で、いかに効率的に学習を進めるかが重要でした。
試験の構成とポイント
試験は大きく分けて以下の3つのセクションで構成されています。
• 午前Ⅰ(※免除制度あり)
• 午前Ⅱ(四択の選択式問題)
• 午後(記述式問題)
令和5年秋期試験からは、従来の午後Ⅰ・午後Ⅱの区分が一本化され、午後Ⅰのみとなりました。これにより、形式的には受験のハードルがやや下がった印象があります。
試験は年に2回実施されており、他の国家資格と比較してチャレンジの機会が多いのも特徴です。IPA(情報処理推進機構)も2030年までにセキュリティ人材としての「セキスペ(支援士)」を5万人に増やす方針を掲げており、その影響もあってか、若干合格しやすくなっている可能性もあります。
ただし、最大の難関はやはり午後問題です。ここで6割以上得点できるかが、合否を大きく左右します。
私のスペックとバックグラウンド
以下は、私のIT関連資格やスキルの概要です。
• ITストラテジスト試験:2年前に合格
• テクニカルエンジニア(ネットワーク):取得済(旧制度)
ただし、業務ではセキュリティ分野に直接携わることはほとんどなく、主にプロジェクトマネジメントや組込み系(エンベデッド)に関する業務が中心でした。そのため、セキュリティ関連の実務経験はほぼ皆無の状態での受験でした。
合格に必要な基礎知識
情報処理安全確保支援士に必要な基礎知識として、ネットワークの理解は絶対に欠かせません。セキュリティの多くはネットワークを前提として構築されているため、ネットワークが苦手な方は、まずは基本情報技術者や応用情報技術者など、前段階の資格から学ぶことをおすすめします。
また、午前Ⅰの免除を得ることができるというメリットもありますので、効率的な学習計画を立てる意味でも有効です。
使用教材とその選定理由
基本教材
以下の教材を中心に学習を進めました。
• 『情報処理安全確保支援士 ALL IN ONE パーフェクトマスター』(TAC出版)
→ 基礎知識のインプットに適しており、全体像の把握に最適。
• 『情報処理教科書 情報処理安全確保支援士「専門知識+午後問題」の重点対策』(三好康之著)
→ 特に午後問題に強く、合格に必要な記述力が身につく。午前の問題集もダウンロードできる。
• 『うかる!情報処理安全確保支援士 午後問題集』(村山直紀著)
→ 重要ポイントが絞られており、過去問対策に有効。ただし、上級者向き。
『情報処理教科書 情報処理安全確保支援士』(上原孝之著)も評判が良かったのですが、分厚さゆえに私はTAC本を選びました。
教材選びのポイント
• 分厚すぎず、何度も繰り返しやすい構成であること
• 特に午後問題に強い解説を持つ本を選ぶこと
• 基本書+午後問題集の2種類に絞り、あれこれ手を広げないこと
午後問題対策には三好本の丁寧な解説が大変役に立ちました。過去問との組み合わせで理解が深まります。
その他の学習補助ツール
• 過去問道場:無料で使える上に解説も充実。通勤中やスキマ時間に最適。
https://www.sc-siken.com/sckakomon.php
• YouTube(まさるの勉強部屋):情報処理安全支援士の試験動画で一番有名なチャンネルです。気分転換におすすめ。
https://www.youtube.com/channel/UCgBf5j2KIkFBm29Z7fYDG1A
• iPad + Apple Pencil + Goodnotes:紙の代わりに電子ノートで学習。印刷コスト削減にも有効。
ただし、Goodnotesは有料アプリでバッテリーの消費が激しく、充電中に書き込みが不安定になることもあるので注意が必要です。

Goodnotesならこのように直接問題に解答も書けるし、
綺麗に消すこともできます。
「SC R06春の午後 問2」より
試験対策
午前Ⅱ対策
まずはTAC本を使って知識をインプットし、早めに過去問演習へ移行しましょう。自分の苦手な分野を早期に把握し、繰り返し解くことが重要です。
• 最低でも過去問を3回以上繰り返す。
• 解答率は8割以上を目指す。
• 過去問道場を活用したり、三好本からもダウンロードできるので、過去問を徹底的に復習する。
午後対策のコツ
プログラミング問題について
プログラミングに自信がない場合は、思い切って問題を「捨てる」判断も重要です。私は一応勉強はしましたが、本番では選択から外しました。時間的なリスクを考慮すると、潔い判断が功を奏することもあります。
問題の選択と読み方
午後問題は分野ごとに構成されており、出題傾向としては以下が中心です:
• ネットワーク
• Web認証・セキュリティ
• マネジメント
• プログラミング
自分の得意分野を見極めて選ぶことが重要です。設問選びに時間をかけすぎるのは禁物。悩むより早めに問題を解いた方が良いと思います。
実際に、本試験で私は設問選びに失敗しました。解いてみたものの、選んだ設問は解けない問題が多かったので、途中で切り替える決断をしました。それでも時間的には十分間に合ったので、悩んだら解くが良いと思います。
文章題の攻略法
問題文の読み方
登場企業が複数出てくる場合もありますので、対象の企業名を問題の冒頭にメモして混乱しないようにします。

「SC R06春の午後 問2」より
人によっては軽く全体を読んでから、設問に答えるパターンもあるようですが、私は文章を読んで、アンダーラインやカッコがきが見えたら、設問に移るようにしていました。そうした方が時間短縮につながるからです。
問題文を読むときは、ただ読むのではなく、アンダーラインやマークをつけながら読みましょう。
チェックしておいた方が良い箇所
・セキュリティ的に好ましくない箇所 ❌をつけます
〜は使用していない、4けたのパスワード文字列を使用、設定はあるのに無効にしている など
・やけに具体的に説明している箇所
・設問の特有の言葉 サービスYとか、Sシステム、(以下、〜) など
・図にある注記 文字が小さいですが、重要なことが書かれていることが多いです
・そのほか気になるところは⭐️をつけて、目立つようにします。
問題文の中で言っていることがわからない場合は、一旦飛ばすのも手です。
その時は?マークをつけておきましょう。
読み進めるとわかることもあります。
設問と問題を行ったり来たりするので、問題用紙の角を折っておくとわかりやすいです。Goodnotesなどではしおり機能も活用すると効率的です。

アンダーライン、❌、⭐️を細かく記載しています。
わかりづらいですが、上部ページのはじを折っています。
「SC R07春の午後 問2」より
設問の解答方針
• 問われている内容を正確に読み取る。当たり前だけど、できてない場合が多いです。
• 回答は問いに忠実に、理由を聞かれたら「〜ため」、方法を聞かれたら「〜する方法である」と端的に書く。
• 文字数制限(例:40字以内)には特に注意し、35〜40字の範囲を目指す。
ケアレスミス対策
試験後半は集中力が切れがちなので、必ず見直しの時間を確保してください。
私は本試験の見直しで読み違いに気付き、修正することで得点につながりました。冷静な確認は侮れません。
解答の書き写しと反復練習
ここが一番大事なところですが、午後問題の記述力を高めるためには、解答例の書き写しが非常に有効です。必ずノートに書き写します。
設問の解答の書き方や癖を真似て、体の語感に染み込ませることが大事です。特に村山本はその用途に適しており、設問ごとのアプローチがわかりやすく示されています。
最後に
情報処理試験は、実務経験がなくても“今の知識”がしっかりしていれば合格できる試験です。重要なのは、インプットよりもアウトプット(問題演習)を重視すること。単に問題を解くだけでなく、なぜその答えになるのか、どのような言い回しが有効なのかを考えながら進めましょう。
特に情報処理安全確保支援士は過去問がすべて公開されている点で、他資格よりも学習環境が整っています。このアドバンテージを最大限に活用し、過去問を繰り返し解くことこそが合格への最短ルートです。
合格ラインは6割。完璧を目指す必要はありません。広く、浅く、そして丁寧に。
皆さんの合格を心より応援しています!
合格の秘訣